日本学士院

第51回公開講演会講演要旨

1) 金融危機後の米中経済調整   新開陽一

  米国発の世界金融危機の実相は少しずつ明らかになってきた。しかし危機が一応収束したのちのマクロ経済の姿、とくに米中の経済調整の姿は不明のままである。この講演では、サブプライム危機の背後にあるマクロ不均衡をややくわしく解明し、そこから導きだされる米中調整の方向について若干の見通しを示してみる。米中とも、消費・投資などの支出に関しては、かなりの意見の集約がすすんでいるかのごとくであるが、生産あるいは生産構造の調整については、あまり分析がすすんでいないと思われる。私はとくに中国の生産面の調整に新しい視点をあて、今後のマクロ情勢は楽観を許さないと指摘したい。>資料(PDF形式/約1MB)

2) 生物の進化と老化の観点から見た骨   須田立雄

  地球の歴史を1年に縮めてみると、人類は大晦日の午後11時59分に登場したに過ぎないという。 45億年前に地球が誕生してから, 永い、永い時間が経過した。現在、地球上には3,000万種を越える多様な動植物が生存している。 その中で最も進化した生物は脊椎動物であり、その頂点に位置するのがホモサピエンス(現生人類)である。言うまでもなく、脊椎動物の最大の特徴は「脊椎(骨組織)」 を持つことである。 最近の総務省の発表によると、わが国の65歳以上の高齢者人口は全人口の21.5%を超え、その実数は2,700万人に達したという。このような高齢社会を反映して、生活習慣病のひとつである「骨粗鬆症」などの骨代謝疾患を患う高齢者が急増し、その実数は1,000万人を超えたと推定されている。この公開講演会では、生物の進化と老化の観点から見た骨の諸問題について、ご参集の皆様方と一緒に考えてみたいと思う。>資料(PDF形式/約6.5MB)