日本学士院

第57回公開講演会講演要旨

1) 都市の発展と文化 —江戸・東京をめぐって—  藤田昌久

   都市はどのように生まれ、発展していくのだろうか。交通や情報通信技術の発達とともに都市は発展するのだろうか、それとも衰退するのか。たとえば、1964年に東京-大阪に新幹線が開通して以来、東京はますます大きくなり、大阪は衰退の傾向にある。また、国際的に見れば、グローバル化の進展とともに、従来型の生産活動を新興国に奪われて衰退している都市も多いが、東京のように「知識創造の場」として、新たな発展を続けている都市も少なくない。なぜだろう。
講演では、これらの疑問に答えるために、近世以降における江戸・東京を中心とする日本の都市の発展について、世界の都市と比較しながら考えてみたい。結論として、江戸・東京は、日本中・世界中の多様な知と文化を吸収、融合し、新たな知と文化を創り上げる坩堝の役割を果たしてきたことが浮かび上がればと思う。

2) 日本建築の保存と活用   内田祥哉

   日本の古建築は殆どが木造で、地震・台風はもとより、四季の厳しい気象条件に晒されてきた。その維持保存に対する考え方は、法隆寺、大阪城、伊勢神宮に代表されると云われる。
他方、現代の日本建築には、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などがあり、その殆どは、戦後に建てられたため、これまで、維持保全については、あまり考えられてこなかった。ところが建築物の長期利用に伴い、社会の変化に見合った性能向上、用途変更などが求められるようになり、建物の長期維持とともに、活用のための技術が、急速に発達している。
この講演では、木造ではぐくまれた日本人の考え方を説明し、建築の保存と活用のための最近の事情を、上野の建築物も実例に挙げて紹介したい。