日本学士院

第65回公開講演会講演要旨

1) 責任能力のない高齢者による加害事故と家族の責任  奥田昌道

  超高齢化社会といわれる現代社会において、認知症の高齢者が第三者に損害を与えた場合、家族はどのような責任を負うのか、どうすれば責任を負わないですむのか、また、被害者はどのようにして救済されるのか。平成28年3月1日の最高裁判決(JR東海事件判決)は、「線路に立ち入り列車と衝突して鉄道会社に損害を与えた認知症の者の妻と長男の責任の有無」が問われた事案であるが、大きな反響を呼び起こした。講演において、判決の法律的論点を探るとともに、新聞等に見られる様々の意見、提案や今後の課題について考えたいと思う。

2) 電子図書館とその将来   長尾 真

  コンピュータの発展によって世界各国で従来の図書館が電子図書館化され始めている。日本では国立国会図書館で大規模なデジタル化が行われ、ネットを通じて多くの書物を電子的に読むことができる。電子図書館の構築には多くの費用がかかるが、それによって従来の図書館では不可能だった多くの便利なことが実現できる。
  本講演では電子図書館とはどういうものか、その便利な特徴は何かを明らかにするとともに、国立国会図書館の電子図書館の現状をはじめ、ヨーロッパでの意欲的な活動などを紹介し、美術館、博物館などと連携した将来の理想の電子図書館の姿について論じる。