日本学士院

物故会員個人情報

 

氏名

富永健一 (とみなが けんいち)

 

所属部・分科

第1部第1分科

選定年月日

平成22年12月13日

退任年月日

平成31年2月23日

専攻学科目

社会学

過去の要職

東京大学名誉教授、武蔵工業大学名誉教授

受賞等

〔国内〕

勲三等旭日中綬章 (平成15年)
文化功労者(平成20年)

〔海外〕

 

主要な学術上の業績

富永健一氏は機能主義社会学者として「社会変動の理論」を構築しました。片々極まりない社会の変化を普遍的に捉えることは困難な作業です。富永氏は社会構造という比較的変化しないものが変化した時こそ社会変動であると定義し、近代化をキーワードに社会変動を引き起こす種々の命題について精緻な論考を進めました。近代化は西洋に端を発するとされますが、同氏は近代化を経済、政治、社会、文化など種々のサブシステムの変化としてとらえます。ここで西洋と非西洋の近代化を考える上で、各サブシステムのタイムラグという時間軸を導入することで普遍的にとらえる視点を創発しました。
さらに社会変動の実例として社会階層と社会移動の実態を全国調査により実証的に移動の流れを推定し、経験社会学の分野にも大きな貢献を果たしました。また同氏は家族数、女性の就業率、出生率など種々の統計資料を駆使し、家父長制度社会の解体から核家族化への道をたどり、さらに核家族における「機能喪失」と「解体」への道を日本の現状と結び付けて説明し、社会変動の理論における「社会構造」の「機能的必要」という「普遍理論的概念」と結びつける試みを提示しました。
同氏は「理論」と「経験的事実」の関係を、東西の社会史について「構造」と「機能」の視点からその変遷を分析し、さらに該博にして緻密な社会学史についての批判的論考より「理論」と「事実」との有機的連関を目指した比類なき社会学者です。

主要な著書・論文