Skip navigation.

HOME > 会員・客員一覧 > 会員一覧 > 第4分科 > 会員個人情報

会員個人情報

氏名 山崎敏光 (やまざき としみつ) 山崎敏光
所属部・分科 第2部第4分科
選定年月日 平成17年12月12日
専攻学科目 物理学
現職等
  • 東京大学名誉教授
受賞等 国内
  • 松永賞(昭和47年)
  • 仁科記念賞(昭和50年)
  • 恩賜賞・日本学士院賞(昭和62年)
  • 藤原賞(平成6年)
  • 文化功労者(平成21年)
  • 瑞宝重光章(平成22年)
海外
  • フンボルト賞(2000年)
外国アカデミー会員等
  • トリノ大学名誉博士(2002年)
主要な学術上の業績

山崎敏光氏は、原子核物理と素粒子ビーム科学の分野で指導的な研究者であり、現在に至るまで以下のような業績を挙げています。

1.原子核磁気モーメントにおける中間子効果の発見。1966年にバークレーにおいて原子核の高スピン準安定励起状態を系統的に見つけ、それらの磁気モーメントを測る方法を確立しました。1970年に理化学研究所サイクロトロンを用い、210Poの11-状態の磁気モーメントの決定から、陽子の軌道磁気モーメントが10%も異常に大きいことを見いだし、1951年の宮沢弘成の予言を実験的に証明しました[2]。

2.ミュオンスピン回転緩和法(muSR)など中間子科学の開拓。1973年、正負ミュオンのスピン磁気モーメントがNMRと同様、物質の微視的プローブとして使えることに着目し、そのための方法を開拓しました[3,4]。特に、ゼロ磁場緩和関数がのろいゆらぎに敏感であることに注目、正ミュオンの量子拡散、スピングラス、高温超伝導体などの磁性などの研究に応用しました[5-7]。また、東大理学部中間子科学実験施設を創設、世界で初めてのパルス状ミュオンビームファシリティを作り、利用への道を拓きました。

3.準安定反陽子ヘリウムの発見と反物質物理化学。1991年、高エネルギー物理学研究所の陽子シンクロトロンでの実験で、液体ヘリウム中にとまった反陽子が、常識に反し、ただちに消滅しないことを発見[8]。引き続き、CERNにおいて、この反陽子ヘリウムの謎を追求し、多数の高角運動量準安定準位の存在を解明。レーザー共鳴、マイクロ波共鳴の手法により、その精密な分光から反陽子・陽子の荷電空間時間反転の不変性を高い精度で決定しました[9-11]。また、反陽子ヘリウムと水素分子との低温での化学反応において、量子トンネル現象を発見しました[12]。

4.重い原子核における深部束縛パイ中間子状態の予言と発見。「重い原子核においてはパイ中間子原子の基底状態は強い核吸収のため存在しない」との常識を覆し、鉛の同位核において新しい予言[13]どおりそれらが見つかりました[14]。精密な実験の結果から、「パイ中間子・核子間の斥力が原子核中ではカイラル対称性の部分的回復のため強まる」との理論的予測の実験的証拠が得られました[15]。“核中でのクオーク凝縮の減少”を意味するこの結果は、小さなクオーク質量から何故大きな核子質量が生まれるかを説明する南部のシナリオを支持しています。

5.高密度K中間子原子核と超強核力の予言と探索。K中間子・核子間の強い引力を出発点として、少数核子系においてK中間子の強い束縛状態が予言されました[16,17]。従来の常識を破り、その密度は通常原子核密度の3倍に達するという驚くべき結果が導かれました。最も基本的な系であるKpp核はコンパクトな分子的構造を持つことが示され、湯川中間子が媒介する通常核力よりも4倍も強い「回遊するK中間子による共有結合力」の存在が導かれました[18]。これは、1933年にハイトラー・ロンドン模型に基づきハイゼンベルクが考えた核力のモデルの再来です。これらの予言の実験的探索が進行中です。

6.高密度K中間子核の発見。最も基本的なK中間子核K-ppが高密度である場合に限り、これを高エネルギーの陽子—陽子衝突中で生成させることが可能との予言[19]に基づき、フランスのSaturne加速器でのDISTO実験で得られたデータの中にこれを探索した結果、束縛エネルギー2.267 GeV,崩壊幅約100 MeVをもつK-pp Λ + p共鳴状態が発見されました [20]。さらに同様の状態は最近、J-PARCで行われたE27実験で永江グループによっても同定され、今後の展開が期待されます。この束縛エネルギーは当初の理論的予想より2倍も大きく [21]、南部陽一郎のカイラル対称性の部分的回復の効果ではないかと考えられています。

7.K中間子陽子物質(KPM)の予言と探索。K中間子が作る原子核のなかで考え得る最も極端でエキゾティックなものは、陽子と負K中間子だけで作られるΛ* = K-pの凝縮体でしょう。二重Λ*核であるK-K-pp核の生成法が提案されました[22]。Λ*が多数集まると束縛エネルギーがK中間子の静止質量を凌駕するため、中性子にも崩壊しない絶対安定な物質Kaonic Proton Matterになり得るのではないか、との問題が提起され、研究されています。(とすれば、それこそ、巨大で重く、目に見えず、電気的に中性で不活性の物質!宇宙の影法師? 黒衣? かも知れません。)

主要な著書・論文
    1. In-Beam Gamma-Ray Spectroscopy. H. Morinaga and T. Yamazaki, Monograph (North-Holland Pub. Co., Amsterdam, 1976)
    2. Anomalous Orbital Magnetism of Proton Deduced from the Magnetic Moment of the 11- State of 210Po. T. Yamazaki, T. Nomura, S. Nagamiya and T. Katou, Phys. Rev. Lett. 25 (1970) 547.
    3. Negative Muon Spin Rotation at the Oxygen Site in Paramagnetic MnO. S. Nagamiya, K. Nagamine, O. Hashimoto and T. Yamazaki, Phys. Rev. Lett. 35 (1975) 308.
    4. Observation of the T/(T-Tc) Divergence of the μ+ Spin-Lattice Relaxation Rate in MnSi near Tc. R.S. Hayano, Y.J. Uemura, J. Imazato, N. Nishida, T. Yamazaki, H. Yasuoka and Y. Ishikawa, Phys. Rev. Lett. 41 (1978) 1743.
    5. Zero- and Low-Field Spin Relaxation Studied by Positive Muons. R.S. Hayano, Y.J. Uemura, J. Imazato, N. Nishida, T. Yamazaki and R. Kubo, Phys. Rev. B20 (1979) 850.
    6. First Observation of an Antiferromagnetic Phase in the Y1Ba2Cu3Ox. N. Nishida et al., Jpn. J. Appl. Phys. 26 (1987) L1856.
    7. Quantum Diffusion of Positive Muon in Copper. R. Kadono et al., Phys. Rev. B39 (1989) 23.
    8. Discovery of Antiproton Trapping by Long-Lived Metastable States in Liquid Helium. M. Iwasaki et al., Phys. Rev. Lett. 67 (1991) 1246.
    9. Formation of Long-lived Gas-phase Antiprotonic Helium Atoms and Quenching by H2. T. Yamazaki et al., Nature 361 (1993) 238.
    10. First Observation of Laser-Induced Resonant Annihilation in Metastable Antiprotonic Helium Atoms. N. Morita et al., Phys. Rev. Lett. 72 (1994) 1180-1183.
    11. Antiprotonic Helium. T. Yamazaki, N. Morita, R.S. Hayano, E. Widmann and J. Eades, Physics Report 366 (2002) 183-329.
    12. Quantum tunnelling effects revealed in collisions of antiprotonic helium with hydrogenic molecules at low temperatures. B. Juhasz et al., Chem. Phys. Lett. 379 (2003) 91.
    13. Deeply Bound Pionic States of Heavy Nuclei. H. Toki and T. Yamazaki, Phys. Lett. 213B (1988) 129
    14. .
    15. Discovery of deeply bound π- states in the 208Pb(d, 3He) reaction. T. Yamazaki et al., Z. Phys. A355 (1996) 219-221.
    16. Precision spectroscopy of pionic 1s states of Sn nuclei and evidence for partial restoration of chiral symmetry in the nuclear medium. K. Suzuki et al. Phys. Rev. Lett. 92 (2004) 072302.
    17. Nuclear Kbar bound states in light nuclei. Y. Akaishi and T. Yamazaki, Phys. Rev. C65 (2002) 044005
    18. (K--) production of nuclear Kbar bound states in proton-rich systems via Λ* doorways. T. Yamazaki and Y. Akaishi, Phys. Lett. B535 (2002) 70.
    19. Super strong nuclear forces caused by migrating Kbar mesons - Revival of the Heitler-London-Heisenberg scheme in kaonic nuclear clusters. T. Yamazaki and Y. Akaishi, Proc. Jpn. Acad. Ser. B 83 (2007) 144.
    20. Basic Kbarnuclear cluster, Kpp, and its enhanced formation in the p + p K+ + X reaction, T. Yamazaki and Y. Akaishi, Phys. Rev. C 76 (2007) 045201.
    21. Indication of a Deeply Bound and Compact K-pp State Formed in the pp -> pλK+ Reaction at 2.85 GeV, T. Yamazaki et al., Phys. Rev. Lett. 104 (2010) 132502.
    22. New way to produce dense double-antikaonic dibaryon system, KbarKbarNN, through Lambda(1405)-doorway sticking in p + p collisions, T. Yamazaki, Y. Akaishi, and M. Hassanvand, Proc. Jpn. Acad. Ser. B 87 (2011) 362-370.
    23. Strong binding and shrinkage of single and double Kbar nuclear systems (K-pp, K-ppn, K-K-p and K-K-pp) predicted by Faddeev-Yakubovsky calculations, S. Maeda, Y. Akaishi and T. Yamazaki, Proc. Jpn. Acad. Ser. B 89 (2013) 418-437.
リンク

↑ページの先頭へ