日本学士院学術奨励賞の受賞者決定について
氏名 | 青山和夫 (あおやま かずお) | |
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生年月 | 昭和37年11月(45歳) | |
出身地 | 京都府 | |
現職 | 茨城大学人文学部教授 | |
専門分野 | マヤ文明学、マヤ考古学 | |
研究課題 | 古典期マヤ人の日常生活と政治経済組織の研究 | |
主要な学術上の業績 | 青山和夫氏は、ホンジュラスのコパン遺跡、グアテマラのアグアテカ遺跡の国際共同調査団の団員として、先古典期・古典期マヤ遺跡の調査に従事し、従来十分には注意されていなかった大量の打製石器の出土遺物について、高倍率金属顕微鏡による使用痕分析と中性子放射化分析との併用により、考古学的にその機能を通時的に分析し、また各種石器の定量・定性を分析した結果をデータ化しました。また、その成果にもとづく諸論考により、黒曜石などの原石が特定産地から交易により都市国家にもたらされ、書記と工芸家とを兼ねた支配層の住居における広汎な日常消費用具に加工されて周辺に流布されるに至った状況を明らかにしました。この発見にもとづいて古典期マヤ国家の発展過程における交換の役割と性格、社会的分業、手工業生産、政治経済組織、都市および戦争の内実等について実証的に解明しています。 このように青山氏の独創的な作業は、マヤ古代文明の研究に新しい地平を開拓したものとして国際的に高い評価を得ています。 【用語解説】
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氏名 | 大越慎一 (おおこし しんいち) | |
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生年月 | 昭和40年10月(42歳) | |
出身地 | 神奈川県 | |
現職 | 東京大学大学院理学系研究科教授 | |
専門分野 | 物性化学、磁気化学、光物理化学 | |
研究課題 | 磁気化学を基盤とした新規磁気物性の創出に関する研究 | |
主要な学術上の業績 | 大越慎一氏は、物理化学をベースに斬新な設計概念を駆使して、分子と金属イオンが結合した金属錯体により、従来にない磁気物性を示す物質を数多く創出しました。 プルシアンブルー類似体を用いた、強磁性と強誘電性が共存する金属錯体、2重補償点を持つ磁性体、さらに光照射により磁極反転する磁性体あるいは湿度変化に応答する磁性体などを世界で初めて作製し、磁性分野において新しいカテゴリーの物質群を確立しました。また、これらの知見を基に、金属酸化物としては最高の保磁力を示す酸化鉄ナノ磁性体を合成するなど、磁気記録への応用の道も拓いています。 このように、同氏が見出した新たな磁性現象や磁性体は、顕著な学術的貢献に加え応用展開という社会貢献も期待されます。 これらの研究成果は優れた国際学術誌に多数掲載されており、大越氏に対する国内外での評価は極めて高いものとなっています。 【用語解説】
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氏名 | 沖 大幹 (おき たいかん) | |
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生年月 | 昭和39年11月(43歳) | |
出身地 | 東京都 | |
現職 | 東京大学生産技術研究所教授 | |
専門分野 | 地球水循環システム | |
研究課題 | 地球規模の水循環変動と世界の水資源需給の予測 | |
主要な学術上の業績 | 沖 大幹氏は本研究において、全地球の水循環と水収支を種々の観測および世界の水利用に関する膨大なデータに基づき定量的に推定し、大気と陸面の相互作用および人間活動の影響も考慮して将来の水資源需給を予測可能なモデルを構築しました。この研究は地球規模の水循環変動および世界の水資源に関する研究分野を新たに開拓した先駆的なものです。特に、沖氏が開発した大気—陸域水収支法はその後各国の研究グループにより広く用いられており、また同氏の水収支・水循環の予測や世界の水ストレス分布に関する研究は、地球温暖化が水資源に及ぼす影響の評価、気候変動に関する政府間パネル報告や国連生態系アセスメント、および日本政府の水と衛生分野に関わるODA政策の基礎となっています。 このように、沖氏の研究は研究面で国際的に極めて高く評価されるとともに、世界の水資源問題の解決への指針を与えるものです。 【用語解説】
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氏名 | 林 康紀 (はやし やすのり) | |
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生年月 | 昭和40年7月(42歳) | |
出身地 | 愛知県 | |
現職 | 理化学研究所脳科学総合研究センターユニットリーダー マサチューセッツ工科大学脳認知学部、ピカワー学習記憶研究所、 理研-MIT脳科学研究センターアシスタント・プロフェッサー |
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専門分野 | シナプス可塑性 | |
研究課題 | 海馬シナプス可塑性の分子機構 | |
主要な学術上の業績 | 林 康紀氏は、脳の高次機能、記憶のメカニズムの素過程である海馬長期増強現象(LTP)について分子生物学、薬理学、電気生理学とイメージングを統合して優れた先見性と独創性のある研究成果をあげてきました。 特に、蛍光蛋白を使い可視化することによってシナプス伝達を担っているグルタミン酸受容体が、LTP誘導に伴いシナプスに移行し、増加することでより強い伝達が起こることを示した研究があります。さらに、LTPにともないシナプスが数十秒の単位で大きくなり、また忘却の過程として知られる長期抑圧(LTD)では、小さくなることを示し、これにカルシウムカルモジュリン依存性の蛋白リン酸化酵素(CaMKII)とアクチン細胞骨格が関連していることを明らかにした成果は、高く評価されています。 林氏は、このように脳科学の重要課題である記憶過程の基礎にあるシナプス前部と後部における現象を学際的かつ精緻な技術を駆使して研究を進めており、将来のさらなる発展が期待されます。 【用語解説】
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氏名 | 藤原 徹 (ふじわら とおる) | |
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生年月 | 昭和39年9月(43歳) | |
出身地 | 大阪府 | |
現職 | 東京大学生物生産工学研究センター准教授 | |
専門分野 | 植物栄養学、植物分子遺伝学、植物生理学 | |
研究課題 | 植物におけるホウ素輸送体の発見 | |
主要な学術上の業績 | 藤原 徹氏は、古くから植物における必須元素の一つとして知られるホウ素の輸送に関わる遺伝子の初めての発見を起点に、植物栄養学の領域で世界をリードする先進的研究を展開している研究者です。特に、シロイヌナズナにおけるホウ酸の排出と取り込みにかかわる2種類の輸送体やその相同遺伝子産物を同定してその機能を明らかにするとともに、それら輸送体の膜における発現がホウ素の不足または過剰によって制御される動態を解明し、さらにそれら輸送体遺伝子を導入することによってホウ素欠乏や過剰に耐性な植物の作出に成功した一連の研究は、必須元素の植物における輸送機構について基礎的にも極めて優れた成果です。それと同時に、現実の農業生産に影響を及ぼしているホウ素過剰または欠乏を克服する上で応用的にも重要な貢献として高く評価されています。 藤原氏によるこれらの成果は、酵母からヒトにいたる真核生物における相同なホウ酸輸送体の発見を導き、これまで受動輸送と考えられていたホウ素の輸送についての概念を覆した点でも普遍的な意義を有しており、基礎、応用の両面で今後のさらなる発展が期待されます。 【用語解説】
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