日本学士院新会員の選定について
日本学士院は、平成24年12月12日開催の第1064回総会において、日本学士院法第3条に基づき、次の4名を新たに日本学士院会員として選定しました。
今回の選定で会員数は135名となります。
(1)第1部第1分科 | ||
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氏名 | 苧阪直行(おさか なおゆき) | |
現職等 | 京都大学名誉教授 | |
専攻学科目 | 認知心理学・認知科学 | |
主要な学術上の業績 | 苧阪直行氏は、“脳のメモ帳”の役割を演じる「ワーキングメモリ」を「目標志向的な課題や作業の遂行に関わるアクティブな一時的記憶」ととらえ、その容量を測定する心理実験の結果と機能的磁気共鳴画像法など脳の活動部位との関係から、「ワーキングメモリ」における個人差の解明と、「ワーキングメモリ」が前頭前野と前部帯状回皮質などのネットワーク結合を背景に、注意を制御するメカニズムについて知見を得ています。 【用語解説】
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(2)第1部第2分科 | ||
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氏名 | 佐藤幸治(さとう こうじ) | |
現職等 | 京都大学名誉教授 | |
専攻学科目 | 憲法学 | |
主要な学術上の業績 | 佐藤幸治氏は、その憲法理論を、司法権と基本的人権の問題分野を軸として展開してきました。これらの主題は、明治以来ヨーロッパ大陸法系の思考伝統を引きついできた日本の憲法学にとっては、日本国憲法下で新しく主要な研究分野となったものであり、佐藤氏の業績は、学界の研究水準を一段と高めるのに画期的な貢献を果たしてきました(『憲法訴訟と司法権』『現代国家と司法権』『現代国家と人権』)。民主主義と司法審査制の間の原理的緊張をふまえた上での司法制度と政治制度の統合的な理解、人格的自律の概念に即した幸福追求権解釈に基づく包括的基本権理論など、同氏の問題提起は学界に新鮮な刺激を与え、後続世代による多くの実りある研究を先導し続けています。(同氏の最近作に『日本国憲法論』[2011]がある)。 【用語解説】
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(3)第1部第3分科 | ||
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氏名 | 竹内啓(たけうち けい) | |
現職等 | 東京大学名誉教授、明治学院大学名誉教授 |
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専攻学科目 | 経済学・統計学 | |
主要な学術上の業績 | 竹内 啓氏は、統計学において優れた研究業績を挙げました。統計学の数理理論の基礎である統計的高次漸近理論を確立し、最尤推定値の最適性に関して独自の基準を示したのが、その最も代表的な業績です。すなわち、竹内氏は、統計量の漸近展開の手法を確立し、それに基づいた膨大な理論的計算を行って、最尤推定値の最適性を「高次の漸近有効性」という形でその意味(と同時に限界)を明らかにしました。これは世界の研究者に先駆けてなされた業績であり、以後、時系列解析や計量経済分析などの分野でひろく応用されています。 その他、数理統計学に関し、統計的推測理論、実験計画法、分布近似論などの分野で多くの論文を発表し国際的に知られています。また、科学技術論、社会科学方法論、日本経済論などに関する多くの著書を出版しています。【用語解説】
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(4)第1部第3分科 | ||
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氏名 | 西村和雄(にしむら かずお) | |
現職等 | 京都大学名誉教授、京都大学経済研究所特任教授、 同志社大学経済学部客員教授 |
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専攻学科目 | 複雑系経済学・経済変動理論 | |
主要な学術上の業績 | 西村和雄氏は、複雑系経済学の世界的第一人者として、景気循環や経済変動の研究で先駆的な業績を挙げてきました。独自の数理的手法を用いて、合理的な経済主体の活動の結果として景気循環を説明した研究は、内生的景気循環理論を現代経済学の枠組みの中で構築したものとして、非常に高く評価されています。この成果は、複雑系の理論による経済分析の先駆的業績であり、それ以降も、カオス理論などの応用で内生的景気循環理論を精緻化し、ケインズの「アニマル・スピリッツ」理論に現代的な解釈を与えるなど、国際的に多くの業績を挙げてきました。 西村氏は現代マクロ経済学の応用可能性を大幅に広げ、その後の発展に多大な影響を与え続けています。 【用語解説】
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