日本学士院新会員の選定について
日本学士院は、平成25年12月12日開催の第1074回総会において、日本学士院法第3条に基づき、次の5名を新たに日本学士院会員として選定しました。
(1)第1部第1分科 | ||
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氏名 | 小林道夫(こばやし みちお) | |
現職等 | 龍谷大学文学部特任教授、京都大学名誉教授 | |
専攻学科目 | 西洋近世哲学・科学哲学 | |
主要な学術上の業績 | 小林道夫氏は、デカルト哲学に発する西洋近・現代哲学、それと関連する科学思想史、科学哲学を多岐にわたって研究してきました。業績の第一は、デカルト研究であり、小林氏は、その著作において、デカルト哲学の形成から、認識論、形而上学、自然学と道徳論を、体系的に論述し、日本におけるデカルト哲学の体系的理解に画期的な貢献をしました。特筆すべき点は、従来、フランスにおいても十分になされてこなかった「デカルトの自然哲学」の研究であり、この研究成果は初めにコレージュ・ド・フランスにおける連続講演として結実し、さらにその講演内容はフランス語で公刊され、フランスひいては国際的に高く評価されました。このように、同氏の学問的業績の顕著な特徴は、哲学思想史についての堅固な研究に基づき、哲学の諸問題を究明しようとするところにあります。 【用語解説】
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(2)第1部第2分科 | ||
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氏名 | 鈴木茂嗣(すずき しげつぐ) | |
現職等 | 京都大学名誉教授 | |
専攻学科目 | 刑事法学 | |
主要な学術上の業績 | 鈴木茂嗣氏の研究対象は、刑法、少年法をも含めて刑事法の広い分野に及んでいますが、とりわけ刑事訴訟法について、捜査から公訴、公判、上訴、再審に至るまで、すべての領域にわたって優れた業績を上げ、学界をリードしました。鈴木氏は、まずドイツ刑事訴訟法学に学び、とくにゴルトシュミットの学説を参考に独自の基礎理論を構築し、さらにアメリカに留学して視野を広げ、多数の論文を発表して刑事訴訟法学の進歩に貢献しました。その成果は、『刑事訴訟の基本構造』など、三冊の論文集にまとめられています。比較的最近には、刑事の実体法(刑法)にも深い関心を寄せ、犯罪の「性質論」と「認識論」とを峻別するという手法でパラダイムの転換を試み、体系書『刑法総論』と論文集『犯罪論の基本構造』を上梓しています。 【用語解説】
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(3)第1部第2分科 | ||
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氏名 | 藤田宙靖(ふじた ときやす) | |
現職等 | 東北大学名誉教授 |
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専攻学科目 | 行政法 | |
主要な学術上の業績 | 藤田宙靖氏は、日独行政法学で構築されてきた「法律による行政の原理」・「近代法治国家の原理」を「ものさし」(理念型)として、独自性・一貫性を保ちつつ新たな法現象にも柔軟に対応できる行政法総論(作用法・救済法)の体系を樹立し、わが国公法学の発展に多大の寄与をしました。藤田氏が提示した、「行政主体と私人の二元的思考」・「行政の内部関係と外部関係」の図式および行政活動の「3段階構造モデル」は、近・現代における日本行政法の構造の重要な分析視角となっています。 【用語解説】
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(4)第2部第4分科 | ||
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氏名 | 佐藤勝彦(さとう かつひこ) | |
現職等 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構長、 |
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専攻学科目 | 宇宙物理学 | |
主要な学術上の業績 | 佐藤勝彦氏は、素粒子間に働く力の統一理論に基づくと、宇宙初期に極めて大きな真空のエネルギーが存在することに着目し、このエネルギーによって宇宙が加速的急膨張を起こすという理論を世界に先駆けて提唱しました(この理論を米国のA. Guth はインフレーションと名付けました)。佐藤氏は更に、相転移で解放された真空のエネルギーによって、宇宙は熱い火の玉(ビッグバン)となることを示しました。 【用語解説】
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(5)第2部第7分科 | ||
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氏名 | 山中伸弥(やまなか しんや) | |
現職等 | 京都大学iPS細胞研究所所長/教授、 |
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専攻学科目 | 幹細胞生物学 | |
主要な学術上の業績 | 山中伸弥氏は、マウスやヒトの皮膚細胞に4種の遺伝子を導入し、ES細胞(胚性幹細胞)と同等の、ほぼ無限に増殖する能力と様々な組織や臓器の細胞を作り出す多能性を持つ、iPS細胞を樹立しました。このiPS細胞は、組織や臓器を再建する再生医療や、薬剤開発への応用が期待されています。分化した細胞を受精卵のように多能性状態に再プログラムが可能なことは、カエルなどの体細胞核を、核を除いた未受精卵に移植する実験で示されていましたが、そこには複雑なプロセスがあると考えられていました。これに対し山中氏らは、わずか数種類の因子により再プログラムが可能であることを示すことで、その分子的な機序解明に向けた道筋を付けました。 【用語解説】
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