日本学士院会員の選定について
日本学士院は、平成27年12月14日開催の第1094回総会において、日本学士院法第3条に基づき、次の4名を新たに日本学士院会員として選定しました。
(1)第1部第3分科 | ||
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氏名 | 野中郁次郎(のなか いくじろう) | |
現職等 | 一橋大学名誉教授、 一橋大学大学院国際企業戦略研究科特任教授、 米国カリフォルニア大学バークレー校経営大学院 ゼロックス知識学ファカルティー・フェロー、 立命館アジア太平洋大学客員教授、 早稲田大学特命教授 |
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専攻学科目 | 経営学 | |
主要な学術上の業績 | 野中郁次郎氏は、知識創造経営理論の生みの親として、日本における経営学の発展に多大な貢献を行うと共に、日本企業の経営実践を普遍化し知識を基盤とする経営理論を広く世界に発信することに貢献しました。 日本企業と米国企業の実践的な比較研究によって、日本企業の経営の強みが、効率的な生産システムや現場での業務改善などの手法にとどまらず、個人の経験から集積された暗黙知を基盤とする組織的な知識創造にあるのだという洞察をもとに、新しい知識創造の理論を提示しました。この組織的知識創造というパラダイムは、日本のみならず世界において経営学研究の新しい潮流となり、野中氏の提唱した理論のもとに様々な理論的実証的研究が今日まで行われています。 【用語解説】
組織的知識創造モデル:SECI(セキ)モデル |
(2)第1部第3分科 | ||
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氏名 | 岩井克人(いわい かつひと) | |
現職等 | 国際基督教大学客員教授、 東京大学名誉教授 |
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専攻学科目 | 経済学 | |
主要な学術上の業績 | 岩井克人氏は、一般的な異時点間効用関数を用いた経済成長モデルの最適経路の振る舞いを明らかにし、また、ミクロ経済学的な基礎に基づくマクロ的不均衡動学理論を体系化しました。さらに、進化論的なシュムペーター動学理論や、サーチ理論的基礎に基づく「貨幣論」を提示しました。 最近では、株式会社とは、法律上のヒトとして会社資産を所有し、法律上のモノとして株主に所有されるという、二階建ての所有構造から成ることを中核とする「会社論」を提示し、さらに、法人としての会社とその経営者との関係を典型例として含む、信任関係の統一理論を、「信任論」として定式化しました。 岩井氏が発表した以上の業績は、英文で発表されるとともに、その後、邦文でも著書や論文の形で発表されることにより、内外の多数の研究者に刺激を与えてきました。 【用語解説】
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(3)第2部第4分科 | ||
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氏名 | 諸熊奎治(もろくま けいじ) | |
現職等 | 京都大学福井謙一記念研究センター |
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専攻学科目 | 理論化学 | |
主要な学術上の業績 | 諸熊奎治氏は、分子の構造・機能・反応を設計するための理論化学・計算化学を構築し、世界に冠たる成果をあげてきました。まず、巨大分子系をいくつかの空間領域にわけ、機能の本質を担う重要な領域には精度の高い方法を、重要性が低い領域には簡便な方法を組み合わせるオニオム法を開発しました。また、多数の分子を結び付ける分子間相互作用に関する基礎的研究、物質の変換をつかさどる化学反応の機構と経路の詳細な解明と反応経路自動探索法の開発、触媒反応や生体化学反応の理論的研究などに、先導的な役割を果たしました。さらに、炭素ナノ構造体の生成機構を理論的研究に基づいて提唱しました。 【用語解説】
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(4)第2部第6分科 | ||
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氏名 | 森 謙治(もり けんじ) | |
現職等 | 東京大学名誉教授、 |
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専攻学科目 | 農芸化学 | |
主要な学術上の業績 | 森 謙治氏は、ホルモンやフェロモンなど生物の生理や生態の制御に必須である化合物の立体選択的化学合成の分野を開拓しました。生物はこれらの物質を微量しか生産しないので、それらの化学構造を決定するためには、合成によって充分な量を得られた試料がホルモンやフェロモンとしての作用を示すことを確認する必要があります。また合成した大量の試料を用いて研究すればフェロモンの害虫防除への利用など応用の道が拓かれます。植物ホルモンであるジベレリンの合成や、蛾やゴキブリやショウジョウバエなど昆虫のフェロモンの合成と立体構造の解明は、森氏の顕著な業績です。同氏の合成した試料は広く国内外の生物学的応用研究を支えてきました。 【用語解説】
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